税務調査の勘所

1. 税務調査とは

憲法30条で「国民は法の定めるところによりその納税の義務を負う」とされ、各税法に税務職員の質問検査権が規程されていることから、税務調査は、納税者が提出した申告書が税法に従って正しく処理されているかどうかを、税務署員が実地に臨場して行う確認行為です。

2. 税務調査に来る人はどこから来るか

通常は法人の本店所在地の所轄税務署が行なうことになっています。つまり、申告書を提出した税務署ではなく、調査を行う時点での法人の本店所在地を管轄する税務署が行ないます。

いわゆる「マル査」と言われる調査は、「国税犯則取締法」による強制調査ですが、通常の「税務調査」は、税法に従って正しく処理されているかどうかの確認のために行われるものですから、その規定もそれぞれの税法に規定されており、その内容も任意調査(納税者の同意を得て行う税務調査)として規定されています。

ただ、任意調査といっても、調査に対しての不答弁(税務署員の質問に対して答弁しないこと)や検査拒否等(例えば、税務署員の帳簿検査について帳簿を見せない等)については、罰則規定が設けられています。

3. 税務調査の連絡が来たら

調査日時、調査場所、調査官の所属部門(法人課税第○部門)、及び氏名を確認してください。
顧問税理士の方に連絡があった旨を伝え、税務署に以下の事項を確認していただいてください。

  • ・調査の日時
  • ・調査場所
  • ・調査官の所属部門及び氏名
  • ・調査予定日数
  • ・調査対象となる事業年度の期間

4. 税務調査は何日くらい続くのか?

一般的に税務調査が何日くらい行われるかは、その会社の規模、調査内容によりさまざまです。したがって、一概に何日かかるとは言えません。年商が数千万円程度の規模でしたら、1日もあれば終るかも知れませんが、年商が数十億から数百億円にもなり、しかも各地に事業所がある場合は、数か月かかることもあります。

5. 税務調査の流れ(一般的なケース)

[初日]

  1. 業態に関する質問等(会社案内パンフなどで説明)
  2. 会社組織に関する質問等(組織図などで説明)
  3. 経理に関する質問等(会計ソフト、領収書・請求書綴りなど)
  4. 各組織別に関する質問等(各部長などが業務内容を説明)
  5. 調査に

[2日目以降]

  1. 調査スタート
  2. 各部別にヒアリング(総勘定元帳・領収書・請求書などに基づいて)
  3. 反面調査(取引相手先への確認)
  4. 否認項目の提示
  5. 会社側の主張
  6. 合意した内容に基づき修正申告

6. 準備するもの

1) 定款、株主総会議事録及び取締役会議事録
2) 決算書及び税務申告書
3) 契約書類・稟議書
4) 帳簿書類
5) 領収書・請求書
6) その他

7. 調査官の見るところ

1) 現金の管理状況
現金出納帳残高と実際現金有り高を突合したりします。
 
2) 売上関連
収益計上基準の確認や売上除外の有無、副収入の有無、期ずれのチェック、決算書から見た売上の妥当性などを見ます。

3) 売上原価関連
棚卸資産の評価方法の確認や期ずれのチェック、仕入割戻の確認などを見ます。

4) 人件費関連
架空人件費の有無のチェック、決算書から見た人件費の妥当性などを見ます。

5) 交際費関連
税務上、交際費に該当するかどうかなどが見られます。

8. 税務職員について

税務職員は通常は専門知識豊富で常識的な判断をする人達です。5万人以上の職員がいますので、中には威圧的・傲慢な印象を受ける調査官が来ることも否定できません。
初めて調査を受ける方又は今の税理士さんでは不安だという方は、当事務所までご相談ください。

9. 最も大事なことは「事実関係」

しばしば「事実認定の問題」という言葉が飛び交うことがあります。会計処理や税務申告の基になっている「事実関係」をめぐり、会社は「事実はAだ」と主張するも、調査官は「事実はA′又はBだ」と主張し、見解が対立することがあります。事実が異なると税務の取扱いも異なるからです。真実の事実は一つだけですから事実を作り上げることなく「ありのままの事実」をキチンと説明することが最も肝要です。

10. 正々堂々、対等な折衝力で主張

 否認事項が提示された後は、調査官の主張が正しいものについて受け入れることは当然ですが、疑問に思うこと、納得がいかない点については、まさに「事実関係を踏まえ、法令通達に基づいて正々堂々対等な折衝力でキチンと主張する」ことが大切です。

顧問税理士から税務調査等のご相談についてまずはお話を伺います。

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